礼拝

ヨナ書1章1-10節 『主の御顔を避けて』 牧師 武林真智子 

 10月はヨナ書を分かち合います。他の預言書と違ってヨナ書は預言者が語る言葉ではなく、ヨナ自身の物語が展開されます。彼は主からの言葉に従わず、主なる神の思い直しを怒り、自分の命を失うことを望む人として描かれていきます。
 主なる神は「さあ、大いなる都ニネベに行ってこれに呼びかけよ。彼らの悪はわたしの前に届いている」とヨナに語ります。ヨナは、主の言葉はイスラエルの民にのみ語られるべきと考えていたし、また著者たちが思うアッシリアの都ニネベは自分たちの諸悪の根源のようなイメージがあっただろうと思えます。
ヨナは立ち上がって行動に出ます。主の御顔を避けてニネベとは反対側の地中海へ向かいタルシシュ行きの船に乗り込んでいくのでした。異邦人たちを乗せた船は大風によって砕けそうになり、船乗りたちは恐怖のあまりそれぞれの神にむかって叫ぶのでした。さらにこの災いは誰のせいか、くじをひくとヨナに当たります。ヨナは自分の出自を語り、「海と陸を造られた天の神、主を畏れる者」と、告白し、海に放り込むように語るのでした。
 このヨナ書は主の言葉に従わず、「主の御顔を避けて」行動する自立した意志を感じさせる預言者を描きます。そこに人をロボットとはしない主なる神の大きさと深さを感じることができるように思えます。現代社会に生きる私たちは、自分で考え、自分で決定するように育てられ、災いに遭遇したときも自己責任として切り捨てられる場面を体験します。しかし信仰を告白し、自らの意志でパンを取り、葡萄酒を受ける一人ひとりに、主イエスの体と血による新たな命の契約が届けられるのです。

TOP